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Deltaの欲求5段階説 [日々雑感]

マズローの欲求5段階説という説によれば、人間の欲求というのは1)生理的欲求2)安全の欲求3)親和の欲求4)自我の欲求5)自己実現の欲求の5段階に分かれるということです。言うまでも無く1)の欲求がより人としての活動の根源に関わるものであるのに対して、5)の欲求はより高尚な、もっといえば贅沢な欲求ということが言えるのではないかと思います。

私はこれに習い、Deltaの欲求5段階説というものを提唱したいと思います(あるいはNWAの欲求5段階説、でも可)。言うまでも無くDeltaとはデルタ航空、NWAとはノースウェスト航空のことです。

この理論によると、両航空会社の飛行機に乗る乗客の欲求は 1)飛行機が墜落しない欲求 2)手荷物が無事に着く欲求 3)フライトがキャンセルにならない欲求 4)フライトが遅延しない欲求 5)まともなサービス(機内・機外)を受けられる欲求、の5段階に分けられます。

デルタ航空とノースウェスト航空はアメリカの航空会社の中でも最も低い料金によるフライトサービスを提供している会社だと思いますが、我々はその安さと引き換えに様々な代償を覚悟しなければなりません。

とりわけ、最も高次の欲求として位列する 5)まともなサービスを受けられる欲求、に関しては頭から捨ててかかったほうが良いでしょう。チケットは比較的高額だけど機材が新しく、ホスピタリティ精神溢れる日本人のフライトアテンダントがもれなく付いてくるJALやANAと違い、DeltaやNWAは機材も恐ろしく古く(エコノミー席に個人ビデオモニターが配備されている確率はほぼ絶無)、フライトアテンダントもやたらフレンドリーではあるけれども忘れっぽくて気のきかない(さすがに悪気はないみたいだけれども)大雑把な人ばかりです。また、チェックインカウンターではフライトサービスを売ってるのかケンカを売ってるのか分からないくらいの顧客をナメきった対応をかましてくれます。

しかしまあ、飛行機はあくまで交通手段であってホテルではないのだから、別に機内・機外でのサービスが悪かろうが目的地に無事着けばそれでいい、と割り切ることも可能です。

しかし、そんな謙虚な願いすら叶えてくれないのがアメリカの航空会社の恐ろしいところで、3)フライトがキャンセルにならない欲求 4)フライトが遅延しない欲求、という我々の2つの欲求すらも、しばし「天候の為」という水戸黄門の印籠的キーワードによっていともたやすく打ち砕かれます。

七面倒くさい荷物検査を無事パスし、搭乗口に定刻30分前から律儀に集合している我々をよそに、搭乗開始時刻になっても一向に動き出す気配の無い空港職員達。ここは実は搭乗口ではなくて空港職員用の団欒スペースなのだろうか?と不安になるほど彼らは自分達の談笑に集中し、搭乗開始時刻の遅れなど一向に構おうともせず、待ちぼうけをくらっている我々乗客に対しても放置プレイに徹します。そして搭乗ゲートに響く無常のアナウンス

「本フライトは天候不良のため出発時刻が2時間ほど遅れます」

そんな噴飯もののアナウンスにも死んだ魚のような目で虚ろに聞き従うアメリカ人乗客達…一体全体、彼らは航空会社にロボトミー手術でも施されているのでしょうか?

他に代替となる交通手段があるわけでもなく、いつか日はまた昇る、朝の来ない夜は無い、と自分に言い聞かせながら健気に待ち続ける私達…そんな我々をあざ笑うかのように

「本フライトは天候不順の為、キャンセルされました」

と、悪びれるでもなく堂々と宣言するアナウンスの声。こうなったら航空会社のカウンターにいって代替便のチケットをもらわなければならないのですが、既にカウンターは旧ソ連の食料雑貨店並みの長蛇の列です。

で、果てしない時間の流れの果てにようやく自分の順番が回ってきます。もう面倒くさくてしょうがない、という気持ちを露骨に表情に表しながら端末を叩く空港職員の黒人のおばちゃんの前で、少しでも早い代替便が取れますように、と祈るような気持ちで待つ我々乗客。

しかし大抵の場合、元来の、直行便でいけば2時間足らずのルートの代わりに、どっかのハブ空港までの1時間30分のフライト+待ち時間3時間+ハブ空港から当初の目的地までの2時間のフライト、というようなフライトコンボを提供されます(しかも最終到着時間は深夜12時30分、というようなオマケつき)。最悪の場合は次の日の便に回された挙句、天候不順だから補償費用は出ないのでホテルは自腹、というようなシナリオもあるので、それに比べればマシですが…。

ここで気をつけなければならないのが、上記のような理不尽極まりない通告に対しても、決して気持ちを取り乱してはならないということです。特に、カウンターの職員に対して怒りをぶつけるのは厳禁です。

顧客至上主義という価値観を徹底されている日本のサービス業における顧客窓口と異なり、どうもアメリカの航空業界の顧客窓口職員というのは、顧客を自分達職員よりもヒエラルキーの低い存在とみなしているようです。

なので、「打てば響く(クレームが来れば謝罪する)」といった感じの日本の顧客窓口の対応と違って、アメリカの航空業界では「目には目を、歯には歯を」といった感じで、こちらがクレームを付けるとあちらが逆ギレしてくるケースが多いです。

顧客「俺のフライトはいったいどうなってんだよ!」

職員「知らねーって」

顧客「乗り継ぎ乗れなかったらどうしてくれるんだ!」

職員「だから知らねーって」

顧客「責任者呼べ!」

職員「勝手にしろって」

ってな感じで、クレームをつけても溜飲が下がるどころか、ますます不愉快な気分になるだけなのです。そして結局、クレームの行き着く果ては時間の浪費だけとなり、事態は一向に好転しません。

ということで、結局我々にできるのは「悟り」の境地に入り、ただひたすら従順に彼らの提供する著しく条件の悪いオプションを甘受することだけなのです。自己主張の強いアメリカ人が、こと空港においてだけはひたすら従順な姿勢を見せるのは、恐らく皆がこの「悟り」の境地に入っているからなのでしょう…。

ということで、もう譲歩できるものは全て譲歩して、半日遅れ、もしくは一日遅れでようやく目的地に到着した我々を待ちうけているのが2)手荷物が無事に着く欲求、の喪失です。

Baggage claimのベルトコンベアの前で待てども待てども流れてこない我が荷物。おそらく自分の乗る便が変更されたのにも関わらず、預け荷物にはその情報が紐付けされていなかった為、今頃どこかの空港にひっそりと放置されているのでしょう…。

ここまで来ると、精神的にも体力的にも完全に疲れきっていて、怒る気力もありません。怒る気力があるのなら、既に予定が遅れていて荷物も無いという状況において今後の予定をいかにマネージするかということに力を割いたほうが懸命だと思います。

ということで、我々に残された欲求はもはや 1)飛行機が墜落しない欲求、くらいしか残ってないのですが、恐らくこのままではこの最後の願いすら、きっとアメリカの航空業界では叶えられなくなる日が来るのではないでしょうか。

ここまで読んでいただいた方はお分かりかと思いますが、これらの知見は全て私の個人的な実体験に裏打ちされたものです。今までのわずか一年半のアメリカ生活の中で、フライトがキャンセルされた経験は3度、フライトが定刻通りにつかなかった経験は数え切れないほど、カウンターの黒人のおばちゃんにナメきった対応をされた経験は忘れようとしても忘れられないほど、です。

もし、いま私が道端で拾ったランプをこすったら出てきたランプの精に願いことを三つまで叶えてあげると言われたら、

①Delta航空をこの世から滅殺する
②NW航空をこの世から滅殺する(ただし溜まってるマイルだけは振り替えさせる)
③残りの全てのアメリカの航空会社の職員に、90度のお辞儀と共に「ありがとうございます、お客様は神様です」と言わせる特訓を毎日3時間義務付ける

の三つを叶えてもらいます。マジで。

今回は怒りのあまり、いつにも増して長い上に退屈な文章になってしまいました・・・が、これも全てDeltaとNWAのせいです。ジャニー喜多川風にいうと、「ユー消えちゃいなよ」って感じです、本当に(しつこい?)


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コメント 6

yukiko

帰りのフライトは無事ではなかったのでしょうか?!?!?!
私はどちらの飛行機にも乗ったことがないのですが・・・・
とりあえず、高くてもANAやJALに乗ります、笑
by yukiko (2007-12-29 00:41) 

ハイペリオン

yukikoさん、この度は本当にお疲れ様でした。

えーと、ご想像の通り直近の出来事です(笑)

今は時間のある学生の身分なので、別に半日や一日飛行機遅延のせいで遅れてもそこまでダメージはないのですが、これがまっとうに働いてる方々の貴重なホリデーでの出来事だったら目も当てられないです、きっと。

あと、今日朝一でDVDを発送してきました。エアメールの書き方が間違ってなければ一週間ほどで着くはずです。撮影は下手ですが、被写体が良いのでなかなか素晴らしい映像になってると思います(笑)
by ハイペリオン (2007-12-29 01:48) 

yukiko

今年の飛行機の旅は、散々だったようですね・・・・笑
↑ 笑い事ではないですね^^;
来年は、快適な空の旅、快適なチェックイン、快適な乗り継ぎ・・・
ができることを祈っています☆

DVDありがとうございます!!!
楽しみに待っています^^
by yukiko (2007-12-31 00:22) 

makimaki

ユー消えちゃいなよ・・ 笑っちゃいました 笑
うーん、中国では色んなことに使えそう。。

さて、私もNWで大分やられた記憶があります。
オーランドからミネアポリス経由で日本に帰るとき、ミネアポリスで数時間待たされ、10ドル相当のクーポンをもらって、スタバにいた記憶が・・。
そして、途中で不具合が発生したようで、アラスカ?で一旦ストップしてどうなることやらと思いました。それからはもうNWを使っていません。。
中国の航空会社もひどいものなので、これもなるべく日系を使うようにしています。。。
by makimaki (2007-12-31 01:23) 

ハイペリオン

yukikoさん

>来年は、快適な空の旅、快適なチェックイン、快適な乗り継ぎ・・・ができることを

改めて考えると、私が挙げた5つの欲求が一度のフライトで全て叶えられる確率は本当に稀なものになる気がします・・

それぞれの感覚的な確率を合算すると①99.99999%×②80%×③70%×④50%×⑤30%=8.4%くらいになりますね(笑)
by ハイペリオン (2007-12-31 13:19) 

ハイペリオン

makimakiさんお久しぶりです

そう、なんかクーポン貰える場合ってあるらしいですね~。私は一度もありませんが・・(怒)。最近はフライトが遅れても「キャンセルにならなくて良かった」とむしろホッとするくらいです。なんて寛容な顧客なんだ(笑)。

>途中で不具合が発生したようで、アラスカ?で一旦ストップして

たとえ定刻通りに出発したとしてもこういうのはキツイですね~。命あってのものだねなので・・。実は私は飛行機が本当に苦手なので、離陸・着陸の時と乱気流で飛行機が揺れる時はいつも泣きそうです(笑)できれば帰国時も船で帰りたいくらいです・・。

そういえば私の留学同期のWさんも帰国後は中国方面へ行きそうな気配ですね。ステキな部署に配属されてうらやまC!!私も、少しでも希望の部署に近いところに行きたいものです・・。
by ハイペリオン (2007-12-31 13:29) 

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